ｱﾆｽ・ｳｯｻﾞﾏﾝ氏 独占ﾛﾝｸﾞｲﾝﾀﾋﾞｭｰ！

Startup World Cup（スタートアップワールドカップ）は、米ペガサス・テック・ベンチャーズ（創業者兼CEOアニス・ウッザマン）が主催する、世界最大級のグローバルピッチコンテスト・カンファレンスであり、2017年に第1回目を開催し、今回で４回目を迎えます。世界70以上の国と地域で予選が行われ、地域予選での優勝企業は優勝投資賞金100万ドル（約１億3000万円）を懸け、2022年9月30日（金）に米国サンフランシスコで開催される世界決勝戦に招待されます。 そこでまずは、「“スタートアップ”って、どういう意味？」と疑問を抱く人に簡単に解説しましょう！

“Startup = スタートアップ”とは急成長を遂げる組織や企業のこと。多くの企業では長期的戦略に基づいて事業を成長させますが、“スタートアップ”はあくまで一時的組織として、短期間でビジネスモデルを構築し、その成否を検証する点が最大の特徴とされます。

第１回スタートアップワールドカップ世界決勝戦で栄えある世界王者に輝いたのは、ロボットやIoTを活用した園児の見守りサービスなどを手がける日本代表のユニファ（名古屋市）でした！ 続く第２回世界決勝戦では、米国代表のLeuko Labs（マサチューセッツ工科大学）が。続く第３回世界決勝戦では、ベトナム代表のAbivin（物流最適化システムを開発するスタートアップ）が優勝しています。 そして、2022年9月30日（金）に米国サンフランシスコにて開催される第4回目世界決勝戦には、世界の地域予選を勝ち抜いたファイナリストが集結。どのスタートアップが見事に勝利の祝杯をあげるのか、その結果に世界の耳目が集まっています。

また、スタートアップワールドカップは優勝投資賞金100万ドル（約１億3000万円）のみならず、世界の投資家からの資金調達のチャンスや、企業・著名人とのネットワーク構築、グローバルレベルでの知名度アップなど魅力的な特典やビジネスチャンスの機会を提供しています。

PROFILE

アニス・ウッザマン氏｜ANIS UZZAMAN
ペガサス・テック・ベンチャーズ、創業者兼CEO｜Startup World Cup会長

1975年生まれ。米国シリコンバレーを拠点とするベンチャー投資家であるアニス・ウッザマン氏は、世界70以上の国と地域で予選が開催される世界最大級のイノベーションイベント「スタートアップワールドカップ（Startup World Cup）」の会長も務め、大の親日家としても知られます。

東京工業大学工学部への進学時に初来日。世界のなかでも最も難解とされる日本語を、“話す”“書く”“読む”の全方位からマスターすると同時に、開発システム工学科で学び、オクラホマ州立大学工学部電気情報工学専攻にて修士、東京都立大学（現・首都大学東京）工学部情報通信学科にて博士を取得。

エンジニアとしてスキルを幅広く学んでいた学生時代にIBMからヘッドハンティングを受け、エンジニアとして就職。次第にマネジメント領域において頭角を現し、技術畑から経営畑にシフトチェンジ。 現在、全世界で運用総資産額2600億円、33本のファンドを運営するほか、世界の大手事業会社35社とのパートナーシップによる大手企業内のイノベーション促進の実績を持つベンチャーキャピタル ペガサス・テック・ベンチャーズを米国シリコンバレーにて設立。

現在は世界15カ国に拠点を置き、人工知能（AI）、オートモーティブ、サステナビリティ、ヘルスケアIT、量子コンピュータ、フィンテック、ブロックチェーン、ロボティクス分野などを中心に初期投資からファイナルラウンドまで幅広く投資。

現在は投資家のかたわら、日本上場会社であるアステリア社、テクノホライゾン社、ベンチャー企業であるLark社、Blue Frog Robotics社、Tech in Asia社、Abivin社などにおいて社外取締役を務める。

これまで米国、日本、東南アジアにおいて230社以上のスタートアップへ投資を実施しており、主要な投資実績として海外ではSpaceX 、Airbnb、Coinbase、DoorDash、Robinhood Markets、23andMe、Bird、SoFi、Colorのほか、日本ではココペリ、モダリス、マネーフォワード、メタップス、エアトリ、AI CROSS、ZUU、ジーニーといった上場企業をはじめ、FiNC、テラモーターズ、モンスターラボ、ユニファなど多数のスタートアップをサポート。

さらに、30篇以上の学術論文を執筆するほか、世界中で各種セミナーから招聘を受け、講師として登壇。 著書に、みずからの強靭性を洗い出し、外部とのパートナーシップによって世界をリードする新たな競争力を身につけ、華麗にトランスフォームするためのノウハウを詰めこんだ『シリコンバレーは日本企業を求めている世界が羨む最強のパートナーシップ』（米倉誠一郎氏との共著／ダイヤモンド社）のほか、世界の豊富な実例で、チーム・プロダクトの作り方から特許、資金調達まですべてを盛り込み、常勝ビジネスのバイブル的存在『スタートアップ・バイブルシリコンバレー流・ベンチャー企業のつくりかた』（講談社）。さらに、各分野において新たなイノベーションが起こる環境をつくるためのヒントを共有する『世界の投資家は、日本企業の何を見ているのか？』（KADOKAWA)）など多数。

イントロダクション｜Introduction

去る2022年7月21日、東京・六本木にて“スタートアップ（急成長を遂げる組織・企業）”を発掘・支援する「Startup World Cup JAPAN Regional 2022」が開催されました。

同大会は世界最大級のグローバルピッチコンテスト・カンファレンスの日本予選大会に位置づけられますが、「Startup World Cup」を設立・運営し、会長を務めるのがアニス・ウッザマン氏（以下ウッザマン氏）なのです。

過去3回の世界大会ではApple社やLinkedIn社の共同創業者をはじめ、Cisco社の元CEO兼会長、Oracle社元会長兼などがゲストスピーカーとして参加。そのほか、今大会でも大会趣旨に賛同した世界の名だたる経済人や学者も登壇。

その一部を挙げるだけでもNetflixの共同創業者マーク・ランドルフ氏や、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌ氏といったビッグネームがゲストスピーカーとして名を連ね、東京都知事・小池百合子氏をはじめ、日本政府もスタートアップワールドカップ日本予選大会を強力サポート。

さらに日本予選の今大会では、ジャパネットグループ社とセガサミーグループ社が投資賞金5000万円をそれぞれ進呈するなど、日本予選だけで総額１億円の豪華な機会が提供されました。まさに世界の人々が大会に熱視線を送る、いま最もホットな国際カンファレンスなのです。

2022年9月にサンフランシスコで開催される世界大会への出場権を懸けた今予選会で、日本代表の栄誉に勝ち取ったのは、世界に先駆けた先進的技術とアイデアで「空飛ぶクルマ」や「物流ドローン」の開発を手がける「SKYDRIVE」。

世界優勝投資賞金約１億円を競う70以上の国と地域から革新的なベンチャー企業が集結する、9月開催の世界最大級のスタートアップピッチコンテストの行方も大いに気になるところですが、そんな魅力ある大会の会長を務めるウッザマン氏に、このたびQUEEEN MEDIA単独独占インタビューが実現！

わたしが“いま想っていること” “大切にしていること”の2つのポイントをもとに、「愛する日本」、そして「世界から憧れる日本女性」にメッセージをいただきました。

日本人と米国人の“いいところどり”が、ウッザマン流・オペレーション

多くのビジネスパートナーやメンターからのサポートもあり、ペガサス・テック・ベンチャーズ起業というウッザマンさんらしい地表に立たれたわけですが、テクノロジーとマネジメントをコラボレーションしながら、地球儀を見る視点に立ったグローバルな取り組みにも果敢にチャレンジされていますね。

ウッザマン氏 —— ペガサス・テック・ベンチャーズを設立した際、スタートアップに出資する投資会社（ベンチャーキャピタル）であれば、包括的に日本のベンチャーや先進テクノロジーをサポートできると考えたんです。さらに経済、金融、ビジネスを俯瞰するうち、社長、トップ、責任者を務めることのだいご味や魅力を体感してみたいという気持ちも湧き上がっていきました。何より、日本だけでなくグローバルな取り組みにもチャレンジしたいと思うようになったんです。

結果、現在は米国シリコンバレーを拠点に世界15カ国に展開しているペガサス・テック・ベンチャーズは、グローバルにおいて230社以上のスタートアップへの投資実績を積み重ね、その集大成に位置づけられる「スタートアップワールドカップ」を2017年にスタートするに至り、今年で4回目を迎えます。回を重ねるごとに多くの企業、著名人、財界の方々から熱いご支援を賜り、この場をかりてみなさんにあらためて謝意を申し上げたいと思っています。

米国人であるウッザマンさんから見た、日本人と米国人の違いはどんな点ですか？

ウッザマン氏 —— それはもう明確ですね。日本人はどこの国の人々より勤勉で人情に厚く、仕事は責任感に満ちていて丁寧です。さらに、個人的に親しい日本人のほとんどの方が忍耐強くて謙虚で、優しい。こうした気質は、わたし自身が実際に体感した日本人の素晴らしさと言えますね。

一方の米国人は、攻撃的・精力的・積極的といった押しの強さを表す「アグレッシブ性（Aggressive）」が強く、さらに、常に新しいアイディアを求め自信や自負を形成する「クリエイティブ（Creative）」な素養や、目的な向かって戦術を確実に遂行する「エクスキューション（Execution）」能力が高いといえます。

もちろん国別に性質や気質を明確に分けることはできませんが、米国人気質として挙げたCreative性も日本人の魅力のひとつですが、わたしが考える範囲では、その意味合いが米国人と日本人で少し違うようにも思っているんです。

例えば、新しいものを創るときや立ち上げるとき、日本人はチームやグループで取り組み、“個”としてCreative性をあまり主張しないケースが多く、周囲との調和を考えて特定の人のCreative性をあえて評価しない、そうした考え方が一般的ですよね。一方の米国では、基本的に“個”をベースにしているので、Creativeは個人の創造性としてとらえられるのが普通です。もちろんビジネスにおいても、個々の創造性、責任、成績が評価される風土が形成されています。

このようにCreative性だけをとっても日本と米国では大きな違いがありますが、そうした微妙な国民性の違いや考え方の違い、さらに日本人と米国人の“いいところどり”でビジネスを推し進める方法が、わたし独自のスタイルといえます。

日本人と米国人の“いいところどり”のビジネススタイルについて、具体的に教えてください。

ウッザマン氏 —— これまで多くの日本人と仕事をするなかで感じたことは、日本人の「調整」「調和」の精神といった美徳が、ときにビジネスシーンでは障壁や違和感になってしまうことです。

例えば、新しいことを始める際に日本人とミーティングを実施したとき、「○○をやりたい」「□□もやりたい」と多くのプランやアイデアが出ます。でも、そこから次のステージに移行するまでにかなりの時間をかけ、熟考に熟考を重ねたうえで、ようやく次のActionに移ることが多い……。スピードがビジネスの生命性であり勝敗のカギを握ると考えている私にとっては、ゆったりとしたオペレーションはとても不思議でした。

あるいは、実行できればまだよいのですが、プランやアイデアだけで話が立ち消えになってしまうことが多いのも事実ですね。でもそれでは、そこまでかけた時間や労力がすべてムダになってしまうとわたしは考えます。

で、わたしなりに分析した結果、多方面に気遣いする「調整」「調和」を大事にする日本人気質がビジネスマナーにも浸透していて、時間をかけて丁寧に決断し、多方面の理解を得たうえで仕事を進めることが、日本人らしいオペレーションなんだ、ということが理解できるようになったんです。

逆に日本のビジネスマンは、その時間や労力はムダだとは考えず、その労苦を次に活かせればよいと前向きにとらえます。この発想も「調和」を重んじる日本人気質によるところが大きく、白でもなく黒でもない中間のグレーゾーンで、物事を丸くおさめる文化が関係していると考えています。

でも、この日本人特有の気質が、グローバルな競争化でライバルを打ち負かす原動力になりえるでしょうか？ 答えはNOです。「YESかNOか」「勝つか負けるか」という欧米の価値判断と、スピードが求められ劇的に変化・進化する社会からすれば、ゴール= Successに達成するうえで、日本の「調整」「調和」「丁寧さ」は妨げになりえることが多いのです。

グローバルな競争下で常勝するため、ウッザマンさんはどんなことを心がけていますか？

ウッザマン氏 —— 日本人と欧米人の気質の違いによるメリットやデメリットを理解するわたしは、日本人と米国人の“いいところどり”で物事を推し進めるようにしています。

仮に、今日ひとつのビジネスプロセスにおいて“ある決断”をしたとしましょう。決断したら次は実行に向けてActionを起こしますが、このときわたしが最も大事にしているのが、米国人気質に代表されるExecution能力です。

つまり、今夜決断したら、迷いなく、凄まじいスピードで、明朝すぐにActionを起こす。

このスピード感が、わたしのビジネススタイルの基本でもあるので、オペレーション上の迷いや調整は必要最低限にとどめ、Execution能力をフルに発揮し、目標達成に向けて全身全霊をかたむけます。もちろん、夜に決めたことを翌朝に実行するために睡眠を減らすことだっていといません。迷っている時間や立ち止まっている時間は、わたしにとっては後退であり、ムダな時間でしかないのです。

とはいえ、スピードを求めるあまり、ざっくりいい加減なActionやオペレーションでは元も子もありませんよね。そうならないために、凄まじいスピードでActionを起こして、坂道の上に見えるSuccessの旗をめざしてひたすら前進していきますが、その坂道を登る途中でに待ち構えているひとつひとつのタスクでは、日本人ならではの「丁寧さ」や「調和」、さらに「責任感」や「確実性」を発揮する。

結果、ハイレベルな完成度でタスクを完了させていくのです。だから、坂道の頂点に達したときは、誰より早く、そして誰より素晴らしいクオリティでのゴールになるんです。

こんなふうに「スピーディなAction」に「確実性」や」丁寧さ」をプラスしたオペレーションが、他者に真似できないわたし流の日本人と米国人の“いいところどり”なんです。この米国人・日本人の長所のコラボレーションが、グルーバルな競争下で圧倒的優位に立つカギになる……わたしはそう考え、わたしらしい高い完成度のビジネススタイルを構築するため、日々がんばっているんですよ（笑）。

ダミー日本人と米国人のいいところどりで、他者に真似できないオペレーションを実行

「スタートアップワールドカップ」を通して世界のスタートアップ企業を支援し、新たなビジネスチャンスを発掘される取り組みや、ウッザマンさんのビジネスに傾ける想いに賛同する方が多いことは、ある意味、日本人特有の「こまやかさ」「他者を尊ぶ精神」「他者との調和」といった精神性が関係しているともお考えですか？

ウッザマン氏 —— そうですね。わたしはRespectを意味する「尊（たっと）ぶ」や、他者を思いやる「人情」という言葉が大好きなので、スピードを求めつつも、相手がいまどう考えているか、どうすればみんながハッピーになれるかを、常に考えるよう心がけています。日本人の仕事は「丁寧」と言われますが、これは単に時間をかけることを表しているのではなく、相手を慮ることも意味していますよね。

こんなふうに、今後も既存の概念にとらわれることなくチャレンジし続けることで新たな価値観、新たな創造物を世に送り出していきたいと思っていますが、考えると「ベンチャー = 新興企業」の概念は第二次世界大戦後に生み出されたもの。

これはすなわち、戦後80年弱の歳月のなかで、スタートアップを本格的に支援する取り組みやカンファレンスはなく、わたしが主催する「スタートアップワールドカップ」が、ベンチャーをグローバルに支援する初トライアルであることを意味します。

そうした点からも、「スタートアップワールドカップ」は社会的意義の高いカンファレンスといえますので、今後もこの活動の裾野を広げつつ、多くの方にご賛同を得ながら、新しい価値観、新しいビジネスモデルを支援・創出ていきたいですね。さらにわたしのこの活動によって、地球規模でのこれまでにないベストプラクティスを生み出すPowerになれば本当にうれしい、と想っています。

前編インタビューの最後になりますが、先ほど日本人の気質についてのお話が出ましたが、最近は日本の国力が弱ってきている、という指摘についてお考えがありますか？
ウッザマン氏 ——以前からわたしが日本に対してもの足りなさを感じていた点は「マーケティング」の弱さでしょうか。

ひと口にマーケティングと言ってもいろいろな意味あいや手法がありますが、「遠慮」「控えめ」「横並び = 調和」という国民気質が強い日本人や日本企業は、「PR（Public Relations）」が総じて苦手な傾向にあり、その組織や製品の魅力がきちんと相手に伝わっていないことが多く、そこが本当にもったいないなと思っていました。

実際に、競合他社と競うなかで「遠慮」「配慮」が妨げになって“負けて”しまったケースをわたしは多々見てきました。そのたびに商品やサービスのPotentialを有効にピPRできていないことは非常にマイナスだと感じてきました。

一例として、ある飲料メーカーが自社の新商品であるミネラルウォーターをPRするとしましょう。

米国企業であれば、きっと営業先にこうPRします。 「このミネラルウォーターはどの会社にも負けない、世界一おいしい素晴らしい商品です。ですから、これを飲んだ人は全員幸せになれます」

それに対して日本企業は、次のような感じでPRするはずです。 「富士山の麓で採れたミネラルウォーターです。きっとご満足いただけると思います」

こんなふうに、ひとつの製品に対するPRの違いから、日本と米国の競争力の違いがご理解いただけると思います。先ほども言った通り、欧米では「YESかNOか」「他社・他者より優れているか否か」という二者択一の判断基準なかで物事が進められています。そのため、多分に遠慮や謙虚さが含まれた日本企業のPRは、熾烈な競争下では妨げになってしまうことが多いのです。

YESかNOか、あるいはNo.1なのかそうでないかが明確でない、あるいはその商品やサービスのBenefit（利点）や、Potential（潜在力・将来性）がクリアでないPRでは、グローバルマーケットに打って出ることや、Successを手中にすることはとても難しいといえるでしょう。